健康保険

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健康保険

健康保険は、業務外での病気や怪我をしたときや、お産、死亡したときなどの不時の出費に備え、サラリーマンが保険料を負担し合い、これに事業主も併せて保険料を負担して、いざというときに医療や現金給付を受けることができるようにし生活の安定を図ることを目的とした社会保険制度です。「健康保険」では、被保険者の被扶養者に対しても同様の保険給付が行われます。

医療保険制度は、職域によって、加入する保険が異なり、
自営業者や農業を営む人は「国民健康保険」に加入し、
法人で働くサラリーマンやOLなどは「健康保険」に加入します。
※他にも船員さんが加入する「船員保険」、公務員が加入する「共済組合」などがあります。

 高齢者の医療の確保に関する法律との関係

サラリーマンは「健康保険制度」、自営業者などは「国民健康保険制度」から医療給付を受けることになりますが、75歳以上の後期高齢者については「健康保険制度」や「国民健康保険」制度からではなく、独立した医療制度である「後期高齢者医療制度」から医療給付を受けることになります。

 労働者災害補償保険法との関係

労働者の病気や怪我であっても、その原因が労働者の業務上や通勤上の事由による場合には、労働者災害保険から給付が行われ、健康保険の給付は行われません。

 健康保険の強制適用事業所

次のいずれかに該当する事業所は、法律上当然に適用事業所となります。

  • 1.国、地方公共団体又は法人の事業所であって、常時従業員を使用するもの      (常時1人でも従業員を使用しているすべての法人)
  • 2.常時5人以上の従業員を使用している健康保険の非適用業種以外の個人事業    (適用除外の規定によって被保険者となることができない方も、従業員として数えます)
  • ※非適用業種とは、下記の個人事業をいいます。
    ・第1次産業の事業(農林水産業、畜産業など)
    ・理容・美容の事業
    ・興行の事業(映画の製作または映写、演劇など)
    ・接客娯楽の事業(旅館、料理店、飲食店など)
    ・法務の事業(弁護士、弁理士、公認会計士、税理士、社会保険労務士など)
    ・宗教の事業(神社、寺院、教会など)

 健康保険の任意適用事業所

強制適用事業所とならない、従業員が5人未満の個人事業所や非適用業種の個人事業所でも、一定の要件を満たせば厚生労働大臣の認可を受けて健康保険・厚生年金保険の適用事業所となることができます。

任意適用事業所となるための要件

  • ①その事業所の従業員の2分の1(半数)以上の同意を得なければなりません。
  • ②強制適用事業所以外の事業主が任意適用の認可申請を行うこと
  • ③厚生労働大臣の認可

なお、健康保険・厚生年金保険に加入する場合は事業所単位となりますので、加入を希望しない従業員を含めて加入することになる点に注意が必要です。

また、強制適用事業所が、事業内容の変更や従業員数の減少などによって強制適用事業所の要件に該当しなくなった場合、直ちにその事業所を健康保険の適用事業所でなくしてしまうことは、被保険者の保護の観点から好ましくないため任意適用事業所の認可があったものとみなし、引き続き健康保険の適用事業所として扱われます。

任意適用の取消を行うには、

  • ①被保険者の4分の3以上の同意
  • ②任意適用事業所の事業主の認可申請
  • ③厚生労働大臣の認可

という要件をクリアする必要があります。任意適用取消の申請が認可された場合、その事業所に使用される被保険者は、取消に同意しなかった方も含めて健康保険の被保険者の資格を喪失します。

 健康保険の保険者

健康保険事業の管理運営を行う保険者には、全国健康保険協会と健康保険組合があります。

  • 1.全国健康保険協会
    全国健康保険協会は、政府によって設立され、健康保険組合に加入していない被用者とその家族を対象として、健康保険事業を行う公法人です。都道府県ごとに全国健康保険協会の支部が置かれ、地域の医療費を反映した保険料率を設定するなど都道府県単位の財政運営がなされています。
  • 2.健康保険組合
    健康保険組合は、”単一企業または複数企業により設立”され、その企業の被用者とその家族を対象として、健康保険事業を行う公法人です。健康保険組合を設立するには、厚生労働大臣の認可が必要です。

 健康保険の被保険者

  • 1.一般の被保険者
    一般被保険者には、臨時使用者および短期労務者以外の75歳未満の方が該当します。なお75歳以上の方(一定の障害の状態にあることの認定を受けた65歳以上の方も該当)は、都道府県広域連合が運営する後期高齢者医療の被保険者となります。
    被保険者となる具体例は以下のとおりです。

    • (1)法人の代表者
      法人の理事、幹事、取締役、代表社員、無限責任社員等のいわゆる代表者または業務執行者であっても、法人から労働の対償として報酬を受けている場合は、健康保険の被保険者となります。ただし、個人の事業所の事業主は、被保険者になれないことに注意が必要です。
    • (2)パートタイマーやアルバイトなどの短時間労働者
      名称はなんであれ、週の所定労働時間、または月の所定労働時間数が一般労働者の4分の3以上であれば、原則として被保険者として取り扱われます。なお、平成28年10月から短時間労働者の適用範囲の拡大が予定されており、以下の要件のすべてに該当する者も適用されることになります。
      ●現行適用基準で適用となる被保険者となる従業員501人以上の企業に勤務している
      ●1年以上の使用が見込まれる
      ●週の所定労働時間が20時間以上である
      ●月額賃金が88,000円以上(年収106万円以上)
      ※上記の要件にすべて該当しても学生は適用除外とされます。
  • 2.日雇特例被保険者
    日雇特例被保険者には、一般被保険者から除外される
    臨時使用者(日々雇い入れられる方や2ヶ月以内の期間を定めて使用される方)や
    短期労務者(季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される方や臨時的事業の事業所に6ヶ月以内の期間を定めて使用される方)が
    健康保険の適用事業所に使用されることになった場合に該当します。
  • 4.被扶養者
    健康保険は、被保険者本人だけでなく、その被扶養者の保険事故に対しても保険給付が行われます。

    • 被扶養者の範囲は以下の二つに分類されます。
      • ①主として被保険者によって生計を維持している
        被保険者の直系尊属、配偶者(事実上を含む)、子、孫、弟妹。
      • ②主として被保険者によって生活を維持し、かつ、その被保険者と同一世帯に属している、上記①以外の3親等内親族、事実婚の配偶者の父母及び子、事実婚の配偶者の死亡後のその父母及び子。
        ※後期高齢者医療の被保険者等は被扶養者とされません。
    • 生計維持(被保険者の収入によって被扶養者が暮らしていること)の認定基準
      • ①年間収入が130万円未満であること
        認定対象者の年間収入が130万円未満で、かつ被保険者の年間収入の半分未満であれば、原則として被扶養者になれます。また、認定対象者の年間収入が被保険者の半分以上であっても、130万円未満である場合は、被保険者の収入によって生計を維持していると認められれば、被扶養者になることができます。
      • ②別居の場合は仕送り額で判断
        認定対象者が被保険者と別居している場合には、年間収入が130万円未満で、かつ被保険者からの仕送り額より少ないときに被扶養者となることができます。
      • ③60歳以上は180万円
        認定対象者が60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合には、年間収入の認定基準が「180万円未満」となります。

 健康保険料の決定方法

  • 1.毎月の保険料
    保険料は、被保険者1人ひとりの報酬(月額)を、区切りよい幅で区分されている報酬月額にあてはめた標準報酬月額をもとに、毎月の保険料や手当てなどを計算します。
    標準報酬月額は、健康保険が1級58,000円~47級121,000円、厚生年金保険が1級98,000円~30級620,000円の区分となっています。
    被保険者の保険料は、毎月の給与から控除され、これを事業主が事業主負担分と併せて納付します。
  • 2.報酬月額
    • 報酬とは、賃金、給与、賞与などの名称を問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのものをいいます。ただし、デパート店員に支給される大入り袋など臨時に受けるものや、結婚祝い金などの恩恵的なもの、出張旅費などの実費弁償的なもの、年3回以下支給される賞与などは報酬から除きます。
      年3回以下の賞与については、標準賞与額の対償になり、年4回以上支払われる賞与は報酬に含まれるので注意が必要です。
      ※複数の適用事業所に勤務し、それぞれの事業所から報酬や賞与を受けている方の場合、各事業所ごとに算定した額の合算額を、その方の報酬月額・賞与額とします。
  • 3.決定の時期
    保険料を決定する次期は、次の3つがあります。

    • ①入社時の「資格取得時決定」
    • ②実際に受けた報酬にあわせて毎年9月に定期的に算定し直す「定時決定」
    • ③報酬が2等級以上変動したときに改定する「随時改定」
      ※育児・介護休業期間中の標準報酬月額は、休業した月の賃金が休業したことによって2等級以上低下しても休業開始直前の標準報酬月額の算定の基礎となった報酬月額に基づき算定した額となります。
  • 4.健康保険料の計算方法
    • ①一般の被保険者…事業主と被保険者で折半負担
      標準報酬月額 ×(都道府県別の一般保険料率 + 介護保険料率)
      標準 賞 与 額 ×(都道府県別の一般保険料率 + 介護保険料率)
    • ②任意継続被保険者…被保険者が全額負担
      退職時の標準報酬月額 ×(都道府県別の一般保険料率 + 介護保険料率)
      介護保険料率については40歳以上65歳未満の方を対象に徴収されます。
  • 5.健康保険料の納付方法
    一般の被保険者の場合、事業主が被保険者負担分を給与から天引きし、事業主負担分と併せて翌月の末日までに納付します。
    任意継続被保険者の場合、被保険者本人が、その月の10日までに納付します。なお10日までに納めなかった場合は、任意継続被保険者資格を喪失します。
  • 6.育児休業中の健康保険料の免除
    以下①~③の育児休業期間中については、健康保険・厚生年金保険の保険料は被保険者分及び事業主分とも保険者に申し出を行うことにより免除されます。
    免除期間中も被保険者資格に変更はなく、保険給付には育児休業等取得直前の標準報酬月額が用いられます。
    ① 1歳に満たない子を養育するための育児休業
    ② 1歳から1歳6か月に達するまでの子を養育するための育児休業
    ③ 1歳(上記②の休業の申出をすることができる場合にあっては1歳6ヶ月)から3歳に達するまでの子を養育するための育児休業の制度に準ずる措置による休業

 健康保険給付の種類

健康保険法で定められた疾病または負傷、死亡、出産に関する給付には次のものがあります。
組合健保の場合は、以下の健康保険法で定められた給付に加えてより手厚い付加給付を行うことができます。

  • 1.疾病または負傷に関する給付
    • (1)療養の給付
      被保険者の、業務外の事由による疾病・負傷について保険医療機関(病院・診療所、薬局のほとんどは保健医療機関に該当します)より被保険者に直接の療養を与えるいわゆる現物給付方式で行われます。
      療養の給付として現物給付されるものとしては、以下のものがあります。

      • ①診察
      • ②薬剤または治療材料の支給
      • ③処置、手術その他の治療
      • 居宅における療養上の管理およびその療養に伴う世話その他の看護
      • ⑤病院または診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
        ※入院時の食事の提供や、温度(空調)や照明、給水など療養環境のを整えることに関しては入院時食事療養費や入院時生活療養費として行われます。
    • 一部負担金
      一部負担金とは、必要ないのに、病院や診療所などを利用する乱診、乱療を防止し、保険財政の安定を図るために認められた制度です。
      健康保険の被保険者が療養の給付を受けたときは、療養に要した費用の一部を一部負担金として病院や薬局などの保健医療機関の窓口で支払います。

      年齢 一部負担金割合
      義務教育就学前(6歳に達する日以後の最初の3月31日まで) 2割
      義務教育就学   ~   70歳未満 3割
      70歳以上     ~   75歳未満 一般所得者:1割
      70歳以上     ~   75歳未満 現役並み所得者※:3割

      ※現役並み取得者とは標準報酬月額が28万円以上の方をいいます。

    • (2)高額療養費
      医療の高度化や長期化などに伴い一部負担金の額や自己負担の額が高額になると、家計を脅かし、その結果として必要な医療の受診が出来なくなってしまうことがあります。
      その様なことを避けるため一部負担金や自己負担額を一定額以下にとどめることを目的として高額療養費というものが支給されています。病院や薬局などの保険医療機関の窓口で支払った自己負担額の1ヶ月(毎月1日~末日まで)の合計が所得に応じて決められている、自己負担限度額を超えた場合に、その超えた分が高額療養費として健康保険から払い戻しされます。

      所得区分 70歳未満の1ヶ月当たりの自己負担限度額 他数回該当※1
      上位所得者※2 150,000円+(医療費-500,000円)×1% 83,400円
      一般 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 44,400円
      低所得者※3 35,400円 24,600円



      ※1.他数回該当とは、同一世帯で直近12ヶ月以内に高額療養費が支給された月が3ヶ月以上有る場合のことです。
      ※2.上位所得者とは、標準報酬月額が53万円以上の方のことです。
      ※3.市区町村民税が非課税の世帯の方です。

    • (3)傷病手当金
      傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の事由による病気や怪我の療養のため労務に服することが出来ず報酬を得られない場合に、療養中の生活を保障し、経済的側面での生活の安定を図るための給付です。

      被保険者が療養のため仕事を連続して4日以上休んで給料を受けられないときに、4日目から生活補償として欠勤一日につき標準報酬日額の3分の2に相当する額が労務不能の期間中に傷病手当金として支給されます。
      なお支給期間は、同一の疾病や負傷に関しては支給開始日から1年6ヶ月が限度とされています。
  • 2.死亡に関する給付
    • (1)埋葬料、家族埋葬料
      死亡に関する給付は、被保険者や被扶養者が死亡した場合、埋葬に要する費用を補填することを目的として、被保険者により生計を維持していた遺族には埋葬料が、被保険者の被扶養者(死産については支給されません)が死亡したときは家族埋葬料が支給されます。支給額はいずれも5万円です。
    • (2)埋葬に要した費用
      埋葬料の支給を受ける要件に該当する者がいない場合は、埋葬を行った方に埋葬料(5万円)の範囲内で実際に埋葬に要した費用に相当する額が支給されます。
  • 3.出産に関する給付
    • (1)出産育児一時金
      出産育児一時金は被保険者が家族出産育児一時金は被扶養者が出産したとき、出産のにかかる直接的費用の保障として1児につき39万円が支給される給付です。
      さらに、次の要件に該当するときは3万円が加算されます。

      • ①産科医療保障制度に加入する医療機関等での出産であること。
      • ②在胎週数が22週以降の出産(死産を含む)であること。
    • (2)出産手当金
      労働基準法の65条では産前6週間(42日)と産後8週間を原則として就業禁止としています。この期間の生活保障として健康保険から出産手当金が支給されます。
      健康保険の被保険者が出産で仕事を休み、給料を受けられないときに支給され、支給期間は、出産(予定)日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日後56日までです。出産手当金の額は、標準報酬日額の3分の2とされており、出産日が予定日よりも遅れた場合は、その日数分も加算して支給されます。