土木一式工事

土木一式工事とは

トンネルやダム、高速道路など大規模な土木工作物を建設するには,鳶職さん、型枠大工さん、鉄筋工事屋さん等など・・・と、複数の専門業者さんが協力して行うことが必要です。

建設業法では、それら色々な工事を、専門業種として27種類に分類しているのですが、この専門業者さんたちを束ね、土木工作物を建設する業務のことを土木一式工事業と定めています。

このように、(元請の立場で)下請の専門工事業者さんを束ねて(マネジメントして)土木工事を行う場合に、土木一式工事業の許可が必要になります。

よく誤解されているケースがみられるのですが、土木一式工事業の許可は,とび・土工・コンクリート工事鋼構造物工事、舗装工事などの土木工事に携る専門工事がどれでも全てできる許可という意味ではありません。

あくまでも、
専門の工事をする業者を束ねる(マネジメントする)仕事ができる許可ということなので、土木工事を全部請け負う場合は、土木一式工事の許可があれば、請け負うことができますが、工事1件の請負金額が500万円以上のとび・土工・コンクリート工事鋼構造物工事、舗装工事などの部分的な専門工事のみを請け負う場合は、土木一式工事の許可では対応できず、別途、とび・土工・コンクリート工事業や鋼構造物工事業、舗装工事業の許可が必要となります。

また、2つ以上の専門工事を有機的に組み合わせて、独立の使用目的のある土木工作物を造る工事だけでなく、工事の規模、複雑性からみて総合的な企画、指導および調整を必要とし、個別の専門的な工事として施工することが、困難と認められる工事なども、土木一式工事であるとされています。

他の27の専門工事と異なる点として以下の3点があります。

①元請業者の立場で、以下(a~e)の様な総合的なマネジメントを必要とする工事であること。

  • a 施工計画の総合的な企画
  • b 工事全体の的確な施工を確保するための工程管理及び安全管理
  • c 工事目的物、工事仮設物、工事用資材等の品質管理
  • d 下請負人間の施工の調整
  • e 下請負人に対する技術指導、監督等

⇒ 以上のように、元請業者の立場で総合的にマネジメントするゼネコンのような事業者向けの許可業種です。

民間工事における一括下請負(発注者から書面による適正な承諾を得た場合)や、個別の専門工事として施工することが困難な建設工事など一部の例外を除き、原則として下請工事を請け負う場合は一式工事には該当しません。

② 大規模かつ複雑で、専門工事では施工困難な建設工事であること。

⇒小規模な建設工事は含まれません。請負金額200 万円以上とされた時期もあったようですが、現在はそのような面積や請負金額など明確な基準がないために、大規模か小規模かの判断は許可行政庁に委ねられています。 

③ 複数の専門工事を組み合わせて施工する建設工事であること

⇒主体となる工事を施工するために必要となった工事(附帯工事)を行ったとしても、複数の専門工事を組み合わせて施工したとはみなされません。

土木工事の具体例

●ダム建設工事
●空港建設工事
●PCコンクリート工事のうち橋梁などの土木工作物を総合的に建設するPCコンクリート構造物工事
●道路開設工事
●側溝等の現場打ち新設工事
⇒U字側溝などの既製品を使用した工事は「とび・土工・コンクリート工事」に該当します。
●大規模な宅地造成工事
⇒一般住宅の宅地造成工事は、「とび・土工・コンクリート工事」に該当します。
●公道下などの下水道の配管工事および下水処理場自体の敷地造成工事
⇒家屋その他の施設の敷地内の配管工事および上水道の配水小管を設置する工事は「管工事」に該当します。
●農業用水道、かんがい用配水施設工事

土木一式工事業の許可に関する注意点

土木一式工事の許可を受けていれば、他の土木系の専門工事も全て請負うことができると誤解されている方もおられますが、とび・土工・コンクリート工事や舗装工事業などの専門工事を請負う場合は、その専門工事の許可を受けていることが必要です。

また、総合的な企画、指導、調整とは、一般的に、元請業者が複数の下請業者に対して行う業務の事を指します。

そのため、原則として下請工事を請け負う場合は一式工事には該当しないので、土木一式工事業の許可を持っていても請負金額が500万以上の下請工事を行う場合、その工事に該当する専門工事の許可が必要となりますので、必要であると予想される専門工事の許可も併せて申請するようにします。


土木一式工事業の専任技術者の要件

一般建設業の場合

法第7条第2号イ該当

土木一式工事業に係る建設工事に関し、学校教育法による高等学校もしくは中等教育学校を卒業した後、5年以上、または、大学もしくは高等専門学校を卒業した後、3年以上実務の経験を有する者で、在学中に以下の指定学科土木工学(農林土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含む)都市工学、衛生工学又は交通工学に関する学科を修めた者。

土木一式工事業に係る建設工事に関し、学校教育法による専門学校の専門課程を卒業した後、5年以上、実務の経験を有する者で、在学中に以下の指定学科土木工学(農林土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含む)都市工学、衛生工学又は交通工学に関する学科を修めた者。または、3年以上実務の経験を有する者で、在学中に以下の指定学科土木工学(農林土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含む)都市工学、衛生工学又は交通工学に関する学科を修めた者のうち専門士または高度専門士を称する者。

法第7条第2号ロ該当

土木一式工事業に係る建設工事に関し10年以上の実務の経験を有する者。

法第7条第2号ハ該当

●建設業法施行規則第7条の3第2号

①建設業法による、技術検定のうち、検定種目を、1級の建設機械施工、又は1級の土木施工管理、若しくは、2級の土木施工管理(種別を「土木」とするものに限る。)とするものに合格した者。

②技術士法による、第二次試験のうち、技術部門を、
建設部門、
農業部門(選択科目を「農業土木」とするものに限る。)
森林部門(選択科目を「森林土木」とするものに限る。)
水産部門(選択科目を「水産土木」とするものに限る。)
又は
総合技術監理部門(選択科目を建設部門に係るもの、
「農業土木」、「森林土木」又は「水産土木」とするものに限る。)
とするものに合格した者。

特定建設業の場合

法第15条第2号イ該当

●S63.6.6 建設省告示第1317号

①建設業法による、技術検定のうち、検定種目を、1級の建設機械施工、又は、1級の土木施工管理とするものに合格した者。

②技術士法による第二次試験のうち技術部門を
建設部門、
農業部門(選択科目を「農業土木」とするものに限る。)
森林部門(選択科目を「森林土木」とするものに限る。)
水産部門(選択科目を「水産土木」とするものに限る。)
又は
総合技術監理部門(選択科目を建設部門に係るもの、
「農業土木」、「森林土木」又は「水産土木」とするものに限る。)
とするものに合格した者。

法第15条第2号ロ該当

●「指定建設業」 
土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装装工事業及び造園工事業については該当者なし

法第15条第2号ハ該当

●平成元年1.30 建設省告示第128号 

国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と、同等以上の能力を有するものと認定した者。

次の(1)から(3)のすべてに該当する者で、国土交通大臣が建設業法第15条第2号イに掲げる者と、同等以上の能力を有すると認める者。

(1) 建設業法の一部を改正する法律
(昭和62年法律第69号。以下「法」という。)の施行の際に、特定建設業の許可を受けて、当該建設業を営んでいた者の、専任技術者(建設業法第15条第2号の規定により営業所ごとに置くべき専任の者をいう。)として、当該建設業(土木一式工事業)に関し、その営業所に置かれていた者。又は、法施行前1年間に、当該建設業に係る、建設工事に関し、監理技術者として、置かれていた経験のある者であること。

(2) 土木一式工事業に係る、昭和63年度、平成元年度又は平成2年度の、一級技術検定(建設機械施工又は土木施工管理)を受検した者であること。

(3) 財団法人全国建設研修センター及び社団法人日本建設機械化協会の行う、平成元年度又は平成2年度の、土木技術者特別認定講習の効果評定に合格した者であること。

土木一式工事の実務経験について

土木一式の定義は「総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事」ですので、実務経験は「元請」としての経験しか認められません。

下請として施工した土木工事の場合は、とび・土工・コンクリート工事などの専門工事とみなされます。

静岡県において、土木一式工事業の許可の申請をする場合、必要な実務経験年数を証明するために、土木一式工事に関する、以下のいずれかの書類の原本提示が求められます。

  • 「契約書」
  • 「注文書及び請書の控えのセット」
  • 「請求書及び入金の分る通帳又は預金取引明細書のセット」

土木一式工事に限らず、静岡県で、建設業許可取得や建設業の許可業種の追加を、お考えの方は日ごろから、契約書類などを整備し、大切に保管しておきましょう。