労災保険

労災保険

労災保険の目的

労働者が業務上または通勤途中に怪我をしたり、仕事や通勤がもとで病気になったとき、もしくは死亡したときに、被災した労働者やその遺族に対して必要な給付を行う保険です。

労動基準法では、災害補償責任といって仕事が原因で病気や怪我をしたり、
もしくは、仕事が原因の病気や怪我で亡くなってしまったとき
事業主に、過失が無い場合でも、労働者に対して補償する義務があることを規定しています。

しかし、事業主に賠償能力(それなりの財産)がなければ、
被災された労働者や、そのご遺族は救済されないことになってしまうので、

国が労働者災害補償保険制度を運営し、
労働者を一人でも使用する事業主は義務としてこれに加入して
雇用している労働者の賃金に応じた保険料を納付し、

不運にも労働災害に遭ってしまった労働者は、
この労災保険によってさまざまな補償をうけることが出来るようになっています。

労災保険は、その給付のよって労働者が救われる保険ですが、
労働基準法の災害補償責任の義務の履行を肩代わりし
事業主が確実に履行できるようにするために整備された
事業主のための保険制度という側面もある保険制度です。

※労働基準法 第八十四条 (他の法律との関係)

1項 この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法 (昭和二十二年法律第五十号)又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。

2項  使用者は、この法律による補償を行つた場合においては、同一の事由については、その価額の限度において民法 による損害賠償の責を免れる。

労災保険の適用事業と適用労働者

労働者(アルバイト、パート、臨時雇い、日雇労働者、外国人労働者すべてを含む)を
一人でも使用する全事業が適用事業です。

また個人経営の農林水産業でごく小規模のものは、
加入が事業主または労働者の意思に任される暫定任意適用事業とされています。

※アルバイト、パート、臨時雇い、日雇い労働者、外国人労働者など名称や雇用形態に
かかわらず、全ての労働者が労災保険の適用労働者とされています。

建設現場(数次の請負事業)の災害補償

建設現場では、請負契約という形態のもと、元請・下請・孫請など多数の事業者が、
それぞれの会社で使用する労働者を同一の作業場で働かせています。

この様な状況で労働災害が、発生した場合、使用者としての責任の所在が、
元請・下請・孫請のうちの、どの事業主にあるのかが曖昧になってしまいます。

このような、建設現場においては、
たとえ孫請の建設業者の労働者が被災したとしても
指揮命令を行っている元請事業者を実質的な使用者とみなし、
災害補償の責任を課すことで、
被災した労働者を迅速に保護することができるようにしています。

よって、
元請の事業者は、下請の労働者を使用して行った建設現場(数次の請負事業)にあっては
下請負人すべての労災保険料を負担し、

労働災害が発生してしまった場合は、元請業者の労災保険を使用して
元請事業者自身の労働者だけでなく建設現場で働く下請負人すべての労働者の
補償をおこなうことになります。

労災保険料の申告納付

労災保険料は全て事情主が負担します。

4月1日から翌年3月31日までの一年間を保険年度とし、
申告及び納付は毎年6月1日から7月10日までの間で行われています。

保険料は、原則として以下の式により算定されます。
「保険年度一年間に支払われた賃金総額」×「事業の種類ごとに定められた労災保険料率」

しかし、
数次の請負により元請、下請、孫請など複数の事業が混在しながら働いている
建設現場の場合、元請負人のみが当該事業の事業主とみなされ、

元請負人は下請負人に使用される労働者の分も含めて
労災保険料を計算しなければなりません。

そのため、元請負人は、自社の労働者だけでなく、
下請負人に雇用されている労働者の賃金総額も正確に算定する必要があります。

しかし、
建設現場のような数次の請負によって重層的に多数の労働者が働いている事業では、
そこで働いている、すべての労働者の、その建設現場での労働に対する賃金の総額を
正確に算定することは非常に困難なので、
以下の方法で計算した額を賃金総額とする特例が認められています。

賃金総額= 請負金額(消費税込)×労務比率

このようにして求めた賃金総額を、先ほどの労災保険料を求める計算式
「1の保険年度に支払われた賃金総額」×「事業の種類ごとに定められた労災保険料率」
に当てはめて労災保険料を求めることになります。

特別加入制度

労働基準法の労働者ではない中小事業主、土木建築業の個人業者・一人親方、家内労働者などは、労災保険の対象とはなりません。

しかし、業務の実態や災害の発生状況からみて労災保険制度を利用して保護を必要とする場合があるため、

中小事業主とその家族従事者(第一種特別加入者)
一人親方やその他の自営業者とその家族従事者(第二種特別加入者)
海外派遣者(第三種特別加入者)

なども特別に労災保険に加入できる制度が設けられています。
特別加入により、労働者とほぼ同じ補償を受けることができますが、
経営者としての活動中に発生した災害については補償の対象とされていません。

労働基準法でいう労働者の定義 (労働基準法 第九条 )
この法律(労働基準法)で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。



特別加入保険料の額は以下の式で算定されます。

「保険料算定基礎額の総額」 × 「特別加入保険料率」

※保険料算定基礎額は以下の式で求めます。
「特別加入者が選択した3,500円~20,000円の給付基礎日額」 × 365日

労災保険給付の種類

労災保険の給付は、大きく分けると以下のように区分されます。
通勤災害に関する保険給付は、労働基準法の災害補償責任を基礎とするものではないので保険給付の名称に「補償」という文字が使われていません。

  • 業務災害に関する保険給付
  •  傷病(負傷・疾病)に関する給付 — 療養補償給付・休業補償給付・傷病補償年金
  •  障害に関する給付        — 障害補償給付
  •  要介護状態に関する給付     — 介護補償給付
  •  死亡に関する給付        — 遺族補償給付・葬祭料
  • 通勤災害に関する保険給付
  •  傷病(負傷・疾病)に関する給付 — 療養給付・休業給付・傷病年金
  •  障害に関する給付        — 障害給付
  •  要介護状態に関する給付     — 介護給付
  •  死亡に関する給付        — 遺族給付・葬祭給付
  • 二次健康診断給付等給付
  •  一般健康診断において、脳血管・心臓疾患に関する検査項目について、すべてに異常の所見があると診断されたとき医師や保健師による健康診断を受診することができます。

傷病および障害に関する給付

  • 療養(補償)給付
    療養にかかる治療費は、原則として労災保険より全額負担となっています。
  • 休業(補償)給付
    休業の補償は、休業4日目から支給され、1日につき給付基礎日額の6割が支給されます。また労働福祉事業より1日につき給付基礎日額の2割が加算支給されます。このため、合計8割が休業の補償として支給されることになります。
    給付基礎日額の計算方法
    (労災発生日または診断日の直近3ヶ月間の賃金総額) ÷ (3ヶ月間の総暦日数)
  • 傷病(補償)年金
    傷病(補償)年金は、療養の開始後1年6月を経過した日において、負傷または疾病が治っておらず、障害の程度が1級から3級(全部労働不能)の程度に達している場合に支給されます。
  • 障害(補償)給付
    障害(補償)は、負傷あるいは疾病が治ったときに、障害等級1~14級に該当する障害状態にある場合に年金、または一時金が支給されます。
    ※負傷あるいは疾病が治ったとき「治癒」とは症状が安定し疾病が固定した状態になり、治療の必要がなくなったもののことを指します。

要介護状態および死亡などに関する給付

  • 介護(補償)給付
    介護(補償)は、第1級または第2級の障害(補償)年金または傷病(補償)年金を受けている者が、常時あるいは随時介護を受けるときに支給されます。
  • 遺族(補償)給付
    遺族(補償)は労働者の死亡の当時、その労働者の収入によって生計を維持されていた遺族のうちの最新順位者に支給されます。
  • 葬祭料(葬祭給付)
    葬祭料(葬祭給付)は葬祭に通常要する費用を考慮して厚生労働大臣が定める金額が支給されます。

労働災害を予防するために行われる給付

  • 二次健康診断等給付
    二次健康診断等給付は、一般健康診断において脳血管疾患および心臓疾患に関する検査項目のすべてに異常の所見があると診断されたとき、医師又は保健師による健康診断が受けられます。