健康保険・厚生年金保険料について

社会保険料の計算の具体例

健康保険料の計算例
 健康保険料 = 標準報酬月額 × 健康保険料率 
                 (現在の静岡の 健康保険料率は9.75%です。)
 そのため、標準報酬月額が 30万円だった場合の計算式は 以下の通りです。
 健康保険料 = 標準報酬月額 30万円 × 健康保険料率 9.75% = 29,250円 
 29,250÷2 = 14,625円 つまり、事業主と被保険者とが14,625円ずつ負担します。

介護保険料の計算例
 介護保険料 = 標準報酬月額 × 介護保険料率 
                 (現在の静岡の 介護保険料率は1.82%です。)
 そのため、標準報酬月額が30万円だった場合の計算式は 以下の通りです。
 介護保険料 = 標準報酬月額 30万円 × 介護保険料率 1.82% = 5,460円 
 5,460÷2 = 2,730円 つまり、事業主と被保険者とが2,730円ずつ負担します。

厚生年金保険料の計算例
 厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 厚生年金保険料率 
                   (現在の厚生年金保険料率は18.3%です。)
 そのため、標準報酬月額が30万円だった場合の計算式は 以下の通りです。
 厚生年金保険料 = 標準報酬月額 30万円 × 厚生年金保険料率 18.3% = 54,900円 
 54,900÷2 = 27,450円 つまり、事業主と被保険者とが27,450円ずつ負担します。

子ども・子育て拠出金の計算例
 子ども・子育て拠出金 = 標準報酬月額 × 拠出金率 
                   (現在の子ども子育て拠出金率は0.36%です。)
 そのため、標準報酬月額が30万円だった場合の計算式は 以下の通りです。
 子ども・子育て拠出金 = 標準報酬月額  30万円 × 子ども子育て拠出金率 0.36% 
            = 1,080円 となり 事業主が1,080円 全額を負担します。

〇保険料の計算に用いる標準報酬月額とは

健康保険や厚生年金保険では、被保険者が受け取る給与を 一定の幅で区分した
報酬月額に当てはめて決定した標準報酬月額を、保険料の納付額や 年金などの給付額の
計算に用います。
報酬月額は、基本給のほか、役付手当、勤務地手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業手当など、労働の対償として
事業所から現金支給される報酬だけでなく、事業所が提供する 宿舎費や食事代等の現物給与の額も含めて決定されます。

現在の標準報酬月額は、
健康保険 第1級 58,000円 ~ 第50級 1,390,000円
厚生年金保険 第1級 88,000円 ~ 第32級  650,000円 に区分されています。

〇標準報酬月額の決定方法

標準報酬月額の決定方法には
①資格取得時決定 ②定時決定 ③随時改定 ④産前産後休業及び育児休業終了時の改定の 
4通りの方法があります。

①資格取得時決定

従業員を雇用した場合、事業主は、就業規則や労働契約等の内容に基づき決定した
被保険者の報酬月額(の見込額)を
「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届/厚生年金保険70歳以上被用者該当届」により
日本年金機構(年金事務所)や健康保険組合へ届出ます。

この届出内容を基礎にして、従業員の標準報酬月額は厚生労働大臣により決定され、
資格取得時決定された標準報酬月額は、被保険者の資格を取得した月から その年の8月までの 各月に適用されます。
なお、被保険者が6月1日から12月31日までの間に、健康保険や厚生年金保険の適用事業所に入社し
被保険者の資格を取得した場合には、資格取得した月から翌年の8月までの 各月に適用されます。

②定時決定

事業主は、毎年、7月1日現在において、使用している全ての被保険者 及び 70歳以上被用者について、
報酬の計算の基礎となった日数(支払基礎日数)が17日以上であった、4月、5月、6月の3ケ月間に支給した報酬額を、
「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届/厚生年金保険70歳以上被用者 算定基礎届」により
日本年金機構(年金事務所)や健康保険組合へ届出ます。
※なお、特定適用事業所に該当する、被保険者総数が 常時500人(令和4年10月からは100人)
(令和6年10月からは50人)を超える事業所に勤務する 短時間労働者についても
4月、5月、6月の3ケ月間に支給した 報酬の計算の基礎となった日数(支払基礎日数)が11日以上であった場合、
4月、5月、6月の3ケ月間に支給した報酬額を届出ます。

この届出内容を基礎にして、厚生労働大臣は、毎年1度、標準報酬月額を決定し直します。
これを定時決定といい、定時決定による標準報酬月額は、9月から翌年8月までの各月に適用されます。

算定基礎届の提出(定時決定)の対象となるのは、7月1日現在の 全ての被保険者 及び 70歳以上被用者です。
ただし、次の(1)~(4)のいずれかに該当する者は、算定基礎届の提出(定時決定)は不要です。
(1)6月1日以降に 適用事業所に入社し 被保険者資格を取得した者 ← 資格取得時決定した標準報酬月額を使用
(2)6月30日以前に退職した者
(3)7月改定の月額変更届を提出する者(定時決定が行われる7月に随時改定を行う者)
(4)8月 又は 9月に随時改定が予定されている旨の申出を行った者

なお、4月、5月、6月の各月とも報酬の計算の基礎となった日数(支払基礎日数)が17日未満の場合は、
(保険者算定により)引き続き 従前の標準報酬月額にて 定時決定がなされます。 

③随時改定(月額変更)

被保険者及び70歳以上被用者の報酬が 次の(1)~(3)の要件 すべてに該当する場合
次回の定時決定を待たずに 標準報酬月額を変更します。これを随時改定(又は 月額変更)といいます。

(1)被保険者の報酬が、「昇給降給に伴う 基本給額の変更」、「日給から月給への変更等の 給与体系の変更」、
「日給や時間給の 基礎単価の変更」、「住宅手当、役付手当等の 固定的な手当の支給額の変更」 などによる
固定的賃金の変動に伴い

(2)「資格取得時決定や 定時決定にて 定められた、現在該当している 標準報酬月額 」 と
「固定的賃金の変動月以降の 3ケ月間に支給された、
(残業手当等の非固定的賃金を含む)報酬の平均月額が該当する標準報酬月額」 との間に
2等級以上の差が生じた場合で、

(3)固定的賃金の変動月以降の 3ケ月間とも報酬の計算の基礎となった日数が17日以上
(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上)である場合。

事業主は、これら(1)~(3)の 随時改定の要件に該当した 被保険者の報酬月額について
「被保険者報酬月額変更届 厚生年金保険70歳以上被用者月額変更届」により
速やかに 日本年金機構(年金事務所)や 健康保険組合へ 届出を行います。

④産前産後休業期間 及び 育児休業等終了時の改定

産前産後休業期間中 及び 育児休業期間中の 健康保険・厚生年金保険の保険料は、
事業主が 年金事務所に 申し出ることにより 被保険者負担分・事業主負担分の 両方の負担分が免除されます。
これら、産前産後休業期間や 育児休業期間の 保険料免除期間については、
被保険者の年金などの 給付額を決定する際は 保険料を納めた期間として 保険給付額に反映され、
保険料免除期間中の、被保険者の標準報酬月額は、「休業開始直前の標準報酬月額」で あったものと見なして
保険給付額の決定が行われます。

また、育児・介護休業法による 育児休業等の終了日に、3歳未満の子を養育している被保険者は、
職場復帰後も引き続き、幼児を養育する必要があるため、時短措置等により報酬額が低下することがあります。

そのような場合に 健康保険や厚生年金保険の保険料負担が 被保険者にとって過大なものとなってしまうことを
防ぐため、次の(1)(2)の要件を満たす場合には、随時改定の要件である
「従前の報酬月額と2等級以上の差が生じた場合」などに 該当していない場合であっても

育児休業終了日の翌日(職場復職日)が属する月以後の、3ケ月間に受けた報酬の平均額に基づき、
復帰後、4ケ月目からの 標準報酬月額を 変更することができます。

(1) これまでの標準報酬月額と 改定後の標準報酬月額との間に 1等級以上の差が生じること。

(2) 育児休業終了日の翌日(復職日)が属する月以降 3ケ月間のうち、
少なくとも1ケ月における 報酬の計算の基礎となった日数が17日以上
(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上)であること。

〇標準賞与額

平成15年4月より、健康保険や厚生年金の保険料や 厚生年金の年金額を 月々の給与と賞与の両方から計算する
総報酬制が導入されたことで、健康保険や厚生年金の保険料は、毎月の給与だけでなく、
賞与にも、標準報酬月額と同じ保険料率を掛けて計算されるようになり、
厚生年金の年金額は、その計算の根拠となる報酬として、
標準報酬月額と標準賞与額の合計から計算された平均標準報酬額が採用されています。

 総報酬制導入前・後保険料の計算厚生年金の年金額の計算
総報酬制導入前
(〜平成15年3月)
標準報酬月額×保険料率平均標準報酬額×乗率×月数
総報酬制導入後
(平成15年4月〜)
(毎月)標準報酬月額×保険料率
(賞与)標準賞与額×保険料率
平均標準報酬額×乗率×月数

この、標準賞与額を決定する際に その基礎となる賞与は、
賃金、給料、俸給、手当、賞与、その他 いかなる名称であるかを問わず、
被保険者が労働の対償として 受けるもののうち 年3回以下の支給のものとされ、
実際に支払われた賞与額(税引き前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた額が
「標準賞与額」となります。
なお、年4回以上支給されるものは、標準報酬月額の対象となります。

ただし、標準賞与額には、次のような上限額が
健康保険 厚生年金保険の それぞれに 設けられています。

・健康保険の標準賞与額の上限額

健康保険の標準賞与額の上限額は
年間累計額573万円(毎年4月1日から翌年3月31日までの累計額)となり、
標準賞与額の累計が 年度内に既に573万円に達した後においても、賞与が支払われた場合については、
それ以降、標準賞与額は0円として保険者が決定することとなります。

なお、資格取得月に支払われた賞与は 保険料徴収の対象となりますが、
資格喪失月に支払われた賞与は保険料徴収の対象外となります。

そのため、例えば 12月15日に退職した場合、12月16日が資格喪失日となり、
11月29日迄に支給された賞与は保険料徴収の対象となりますが、
資格喪失前であっても、11月30日~12月15日までに支給された賞与は
保険料徴収の対象外となります。

ただし、健康保険法上、資格喪失月であっても、資格喪失日の前日までに支払われた賞与については、
保険料は徴収されませんが、標準賞与額として決定し、健康保険の標準賞与額の年度上限額(573万円)に累計されます。

また、同一年度内で、転職などに伴い、被保険者資格の取得、喪失があった場合に、
資格取得時の保険者と資格喪失時の保険者、再度取得した時の保険者が同一であれば、
健康保険の標準賞与額の年度上限額(573万円)は累計されます。

この場合、年金事務所が573万円を超えていないと判断してしまい、限度額を超えた後においても
適用事業所より保険料を徴収し続けてしまうことを避けるため、年度の累計が573万円を超える場合、
被保険者の申出により 事業主は「健康保険標準賞与累計申出書」の提出が必要となります。

なお、同一年度内で、転職等がなく、被保険者期間が継続している場合は、累計額が573万円を超えても事業主は「健康保険標準賞与累計申出書」の提出は不要です。

資格喪失月に支払われた賞与と同様に、
育児休業等における保険料免除期間の間に支払われた賞与についても保険料は徴収されませんが、
標準賞与額として決定し、健康保険の標準賞与額の年度上限額(573万円)に累計れます。  

・厚生年金保険(子ども・子育て拠出金)の標準賞与額の上限額

厚生年金保険(子ども・子育て拠出金)の標準賞与額の上限額は、1ケ月あたり150万円となり、
同月内に2回以上支給されるときは合算した額で 上限額が適用され150万円を超えるときは
150万円とされます。

そのため、厚生年金の保険料については、年間150万円を超える賞与を支給する場合は、
年に2回3回に分けて賞与を支給するよりも、年に1回まとめて支給すると、
150万円を上限とした厚生年金保険料のみ徴収されることとなります。

更に、在職老齢年金(特別支給の老齢厚生年金 又は、老齢厚生年金の受給権を有しながら
厚生年金の被保険者である者で、給与額と年金額の調整が行われる者)における算定についても、
その月(調整月)の標準報酬月額と その月以前1年間の標準賞与額の総額を12月で除した金額を
足した額を用いて計算されることから、150万円を超える賞与を支給するのであれば 
年に2回3回に分けて賞与を支給するよりも、年に1回まとめて支給した方が、
最大150万円を12月で除した額のみが調整の対象となるため年金受給において有利といえるため、
年金受給から逆算した給与や賞与の最適化に取り組んでいる事業所も見られます。

〇健康保険・厚生年金保険の保険料の負担

①健康保険料

政府管掌健康保険(協会けんぽ)の保険料は、
「毎月の給与」や、「毎年4月1日から 翌年3月31日までの 賞与の累計額」を基に決定された
「標準報酬月額」や「標準賞与額」に、共通の保険料率を かけて計算され、
事業主と被保険者とが半分ずつ負担します。

事業主は、被保険者負担分の 健康保険の保険料を 被保険者に支払う給料から 控除し
事業主負担分と合わせて、保険者に 納付する義務があります。

政府管掌健康保険(協会けんぽ)の健康保険料率は、都道府県ごとに定められ、
毎年3月に見直しが行われています。
保険料額表によると、静岡県の場合、令和5年4月分納付分からは、9.75%となっています。

また、40歳から64歳までの、介護保険第2号被保険者の場合は 、健康保険料率9.75%に 
介護保険料率1.82%が加わり 11.57%となっています。

協会けんぽの健康保険料(一般保険料額)

介護保険第2号被保険者以外の健康保険料
= 標準報酬月額 × 健康保険料率(9.75%)+ 標準賞与額  × 健康保険料率(9.75%)

40歳以上65歳未満の介護保険第2号被保険者に該当する場合の健康保険料
= 標準報酬月額 × 健康保険料率(9.75%)+ 標準賞与額  × 健康保険料率(9.75%)
  標準報酬月額 × 介護保険料率(1.82%) + 標準賞与額  × 介護保険料率(1.82%)

②厚生年金保険料

厚生年金保険の保険料も、
「毎月の給与」や、「毎年4月1日から 翌年3月31日までの 賞与の累計額」を基に決定された
「標準報酬月額」や「標準賞与額」に、共通の 全国一律に定められた保険料率を かけて計算され、
その保険料を、事業主と被保険者とが半分ずつ負担します。

厚生年金保険の保険料率は、年金制度改正に伴い 平成16年から 段階的に引き上げられてきましたが、
平成29年9月を最後に引上げは終了し、厚生年金の保険料率については 18.3%で固定されています。

厚生年金保険料
= 標準報酬月額 × 厚生年金保険料率(18.3%)+ 標準賞与額 × 厚生年金保険料率(18.3%)  

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