建設業の労働時間管理⑤(年次有給休暇)

建設キャリアアップシステム活用による、働き方改革の推進には、
「年次有給休暇の年 5 日取得日の確保」や「労働時間の状況の把握の実効性確保」が重要となります。
このページでは建設業の労働時間管理⑤として年次有給休暇について解説します。

年次有給休暇の付与要件

年次有給休暇は、
雇入れ日から起算して「6ヶ月間継続勤務」し「全労働日の8割以上出勤」した場合に、
労働者に10労働日付与されます。

「6ヶ月間の継続勤務」について

「継続勤務」の期間は、労働契約の存続期間つまり在籍期間をいいます。
つまり、会社に在籍している限り、休職期間、長期欠勤期間等も通算されます。

また、定年退職後再雇用している場合などは、退職時に雇用関係は終了しますが、
実質的には労働関係が継続していると認められる場合には、勤務年数は通算されます。

「全労働日の8割以上の出勤」について

全労働日について

全労働日とは、労働契約上労働義務の課せられている日のことを言い、
暦日数から所定休日を除いた日を言います。

例えば、雇入れ日が1月1日の場合、6ヶ月継続勤務の要件を満たすには、
6月30日まで在籍していることが必要です。

また、1月から6月までの暦日数は、181日です。仮にこの間の所定休日数が、48日とすると、
全労働日は、181日−48日=133日となります。

従って、年次有給休暇の権利発生には、この全労働日133日の8割以上出勤、
つまり107日以上出勤していることが必要です。

ですから、131日−107日=26日となりますので、所定休日以外に、
27日以上欠勤等している場合には、年次有給休暇の権利は発生しないこととなります。

なお、所定休日に労働した場合は、全労働日にはなりません。
つまり、上記の例で、所定休日以外に27日欠勤したが、所定休日の内、1日休日労働した場合には、出勤日数そのものは、107日となりますが、

この場合には、有給休暇の権利は、発生しないこととなります。
また、使用者の責めの事由により休業させた日や、
正当な同盟罷業等の争議行為により、労務の提供が全くされなかった日も、
全労働日には含まれません。

出勤日について

年次有給休暇の権利発生の要件に、全労働日の8割以上の出勤が必要ですが、
以下の期間及び日は、「出勤したもの」とみなします。

1 業務上負傷し、また疾病にかかり療養のため休業した期間
2 育児・介護休業法による育児休業又は介護休業した期間
3 産前産後の女性が、労働基準法第65条の規定によって休業した期間
4 年次有給休暇を取得した日

例えば、1月1日の雇用した労働者が、1月1日に業務上負傷し、
翌日から6月30日まで療養のため休業したとします。
この場合、休業していて在籍しているので、6ヶ月の継続勤務の要件は、満たします。

また、実際に出勤した日は1日ですが、業務上負傷し、また疾病にかかり療養のため
休業した期間は、出勤したものとみなされるため、全労働日の10割出勤したこととなります。

ですから、実際には1日しか出勤していなくても、有給休暇の権利発生の要件である。
「6ヶ月間継続勤務」及び「全労働日の8割以上出勤」の双方を満たすこととなります。

また、遅刻・早退については、1労働日の一部しか労働していませんが、
出勤率の計算上の出欠は、労働日を単位としてみるべきと考えているので、
遅刻・早退しても出勤日として取り扱う必要があります。

年次有給休暇の賃金

年次有給休暇の賃金は、
1平均賃金、
2所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、
3健康保険の標準報酬日額相当額

のいずれかにより支給することとなります。

なお、3の健康保険の標準報酬日額相当額によって支給する場合には、
労使協定の締結が必要となります。

年次有給休暇の付与日数

年次有給休暇は、雇入れ日から起算して、
6ヶ月継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、
継続又は分割した10労働日付与されます。
つまり、最初は6ヶ月経過後に付与されます。
その後は、雇入れ日より6ヶ月経過した日から1年経過ごとに付与されます。

例えば、4月1日に雇入れされた労働者は、要件を満たしている場合、
10月1日に最初の有給休暇が付与され、次に付与されるのは、翌年の10月1日となります。

つまり、2回目の年次有給休暇が付与されるのは、雇入れ日より、1年6ヶ月経過後となります。
その後は、2年6ヵ月後、3年6ヵ月後と付与されていきます。

例えば、4月1日雇入れ日の労働者の場合、
10月1日が最初の年次有給休暇の権利が発生する日であり、

その後は、毎年10月1日に権利が発生していきます。
年次有給休暇の権利が発生する日を基準日と言います。
この場合では、10月1日が基準日となります。

年次有給休暇は、この基準日において、継続勤務と全労働日の8割以上出勤の要件をみます。
全労働日の8割以上出勤の期間は、最初は雇入れ日より6ヶ月間ですが、
その後は、1年間となります。

例えば、雇入れ日より6ヶ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した場合には、
10月1日に10労働日の年次有給休暇が付与されます。

しかし、その後の1年間の全労働日のうち出勤率が8割未満であった場合には、
年次有給休暇の権利発生の要件を満たさないため、
翌年の10日1日には、年次有給休暇の権利は、発生しないこととなります。

しかし、年次有給休暇の権利発生の要件は、基準日ごとに見るため、
次の1年間の全労働日のうち8割以上出勤した場合には、
翌々年の10月1日には12日労働日の年次有給休暇が発生します。


つまり、年次有給休暇は、要件を満たさず、1回権利が発生しなくても、
その後の基準日で要件を満たせば、 雇入れ日からの経過年月に応じた
以下の日数の年次有給休暇が付与されることとなります。

雇入れ日より1年6ヶ月継続勤務       11日
雇入れ日より2年6ヶ月継続勤務       12日
雇入れ日より3年6ヶ月継続勤務       14日
雇入れ日より4年6ヶ月継続勤務       16日
雇入れ日より5年6ヶ月継続勤務       18日
雇入れ日より6年6ヶ月以上継続勤務     20日

年次有給休暇の付与日数の増加は、20日が上限となります。

従って、7年6ヶ月継続勤務以降、8年6ヶ月継続勤務、
9年6ヶ月継続勤務しても付与される日数は、20日と変わりません。
なお、パートタイマー等、労働時間や労働日数が一定以下の労働者についての付与日数は、
上記日数より労働時間と労働日数に応じて少なくなります。これを比例付与と言います。

時間単位年休について

年次有給休暇は、日ごとでの取得が原則です。
ただし、労働者が半日単位での取得を請求した場合には、半日単位で付与しても差し支えありません。

また、労働者代表との労使協定等を締結すれば、
年に5日分までは時間単位で年次有給休を付与することができます。

半日単位付与については、労働者代表との労使協定等は必要ありませんが、
時間単位付与については、労働者代表との労使協定等の締結が必要です。

時季指定権と時季変更権

使用者は、年次有給休暇を労働者が請求する時季(時季指定権)に与えなければなりません。
また、請求された時季に年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、
他の時季に与えることができます。これを時季変更権と言います。

年次有給休暇の計画的付与

使用者は、労使の書面協定により、年次有給休暇を与える時季について定めをした場合には、
年次有給休暇のうち5日を超える部分については、
その定めにより付与(計画的付与)することができます。

なお、計画的付与で、事業場全体の休業による一斉付与の場合には、
年次有給休暇が少ない労働者や、年次有給休暇が無い労働者がいる場合も考えられるので、
そのような場合は特別休暇等を付与する等の措置を取ることが望ましいと言えます。

年次有給休暇の買い取り

年次有給休暇の買取は、原則として違法となります。

年次有給休暇は、一定期間勤続した労働者に対して、
心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障することを目的としており、

年次有給休暇の買取は、その目的を阻害することとなるため、
労働者が望んでいたとしてもできないこととなっています。

ただし、労働者の退職にあたり、
消化し切れなかった年次有給休暇を買取ることまでについては違法とは解されていません。
ただし、この場合についても、使用者は必ず買取りに応じる必要はなく、
買い取りに応じるかについては使用者の自由とされています。

また、法定を上回る年次有給休暇を付与している場合に、
法定を上回る日数分について、買取することは、労使間の自由に委ねられています。

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