許可を受けようとする者が、その営業所ごとに
建設業法(第7条第2号、第15条第2号)に定める基準に該当する技術者(専任技術者)を
専任で配置していること。
この基準の趣旨は、
建設業許可を受けた営業所において、
建設工事についての専門的知識を有する技術者の技術指導のもとで、
建設工事の請負契約が行われる体制を構築することで、
請負契約の適正な締結および履行を確保しようというものです。
〇営業所への専任について
専任技術者の「専任」とは、
その営業所に常勤し専ら、その職務である、建設工事に関する専門的知識を有する技術者として
請負契約の 適正な締結および履行に関する 技術指導に従事することをいいます。
従って、
専任技術者は、労働契約(雇用契約)等により、事業主体と継続的な関係を有し、
休日、その他 勤務を要しない日を除き、
通常の勤務時間中は、その営業所に勤務している者でなければならないとされています。
なお、
次のような場合は、原則として「専任」とは認められません。
①技術者の住所(又は居所)が営業所の所在地から著しく遠距離にあり、常識上通勤不可能な者
②建築士事務所の管理建築士、専任の宅地建物取引士など、
他の法令で特定の事務所等において専任を要するとされている者
※ただし、
同一法人で同一営業所内に勤務している場合は、
専任技術者と建築士事務所の管理建築士、専任の宅地建物取引士など、
他の法令で 特定の事務所等において 専任を要するとされている者と 兼ねることができます。
〇経営業務の管理を行う常勤役員等との兼任について
・許可を受けるための 基準1 – ①のイやロに該当する常勤役員等が
許可を受けるための 基準2の営業所ごとに置かれる専任技術者の要件を備えている場合には、
(原則として本社又は本店等の)同一営業所内に限って当該技術者を兼ねることができます。
・許可を受けるための 基準1 – ①のロの常勤役員等を補佐する者が、
許可を受けるための 基準2の営業所ごとに置かれる専任技術者の要件を備えている場合にも、
(原則として本社又は本店等の)同一営業所内に限って当該技術者を兼ねることができます。
〇「営業所の専任技術者」となり得る要件
専任技術者となり得る要件は、
許可を受けようとする建設業許可の区分が、
「一般」・「特定」のどちらに該当するかにより異なります。
(1)一般建設業の「営業所の専任技術者」となりうる要件は、次の①~③のいずれかとなります。
要件①
一定の国家資格等を有する者。
許可業種の説明ページにて、〇が付されている資格を有する者が該当します。
但し、次の資格については、一定期間の実務経験が求められます。
第2種電気工事士 ⇒ 免状交付後 3年
第1種・第2種・第3種 電気主任技術者 ⇒ 免状交付後 5年
電気通信主任技術者 ⇒ 資格者証交付後 5年
電気通信工事担任者 ⇒ 第1級アナログ及び第1級デジタルの資格証交付後 3年
または 総合通信の資格証交付後 3年
給水装置工事主任技術者 ⇒ 免状交付後 1年
技能検定2級 ⇒ 合格後 3年
地すべり防止工事試験 ⇒ 登録後 1年
建築設備士 ⇒ 資格取得後 1年
計装士 (計装士技術審査) ⇒ 1級合格後 1年
要件②
許可を受けようとする建設工事に関し、次の実務経験を有する者
イ
・高等学校、専門学校(専門学校専門課程) 又は 中等教育学校の指定学科を卒業した後、
許可を受けようとする建設工事に関して5年以上の実務経験を有する者。
・大学 若しくは 高等専門学校、専門学校(高度専門士課程、専門士課程)の指定学科を卒業した後、
許可を受けようとする建設工事に関して3年以上の実務経験を有する者。
ロ
・許可を受けようとする建設工事に関して10年以上の実務経験を有する者。
・複数業種について、一定以上の実務経験を有する者。(実務経験要件の緩和)
※実務経験要件の緩和
「大工工事業」「とび・土工工事業」「屋根工事業」「しゅんせつ工事業」「ガラス工事業」
「防水工事業」「内装仕上工事業」「熱絶縁工事業」「水道施設工事業」「解体工事業」について
許可を受けようとする場合は、
「許可を受けようとする業種について8年を超える実務経験」と、
「合算できる業種の実務経験」を合わせて12年以上あれば、
営業所ごとに置く「専任技術者」となる要件を満たすことができます。
「許可を受けようとする業種について8年を超える実務経験」 + 「合算できる業種の実務経験」≧12年
(1)「とび」「しゅんせつ」「水道施設」「解体」 ⇒ +「土木一式」 ≧12年
(2)「大工」「屋根」「内装」「ガラス」「防水」「熱絶縁」「解体」 ⇒ +「建築一式」 ≧12年
(3) 「内装」 ⇒ +「大 工」 ≧12年
(4) 「大工」 ⇒ +「内 装」 ≧12年
(5) 「とび」 ⇒ +「解 体」 ≧12年
(6) 「解体」 ⇒ +「と び」 ≧12年
要件③
大臣特別認定者
・海外での工事実務経験を有する者で、当該 経験の内容につき、国土交通省土地・建設産業局の
個別審査を受け一般建設業の「営業所の専任技術者」になり得るとして その認定を受けた者。
(2)特定建設業の「営業所の専任技術者」となり得る要件は、次の①~③のいずれかとなります。
要件①
一定の国家資格等を有する者
(許可業種の説明ページにて、◎が付されている資格を有する者が該当します。)
要件②
指導監督的実務経験を有する者
一般建設業の「営業所の専任技術者」となり得る要件を満たし、
かつ、許可を受けようとする建設業に係る、建設工事に関して、
発注者から、直接請け負い、その請負代金の額が4,500万円以上であるものについて
2年以上、建設工事の設計、施工の全般にわたって、工事現場主任者や現場監督者のような立場で、
工事の技術面を総合的に、指導監督した経験(指導監督的実務経験)を有する者。
※但し、「指定建設業7業種(土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園工事業)」については、
1級など、一定の国家資格者、又は、次の要件③の大臣特別認定者でなければなりません。
要件③
大臣特別認定者
・海外での工事実務経験を有する者で、
当該経験の内容につき国土交通省土地・建設産業局の個別審査を受け
特定建設業の「営業所の専任技術者」になり得るとして その認定を受けた者。
・指定建設業7業種に関して、過去に特別認定講習を受け、同講習の効果判定に合格した者、
若しくは、国土交通大臣が定める考査に合格した者。
※但し、この特別認定講習や考査は、昭和 62 年の法律改正時(監理技術者制度の整備)の、
経過措置として行われたものであるため、現在は、当該特別認定講習及び考査は行われていません。
〇営業所の専任技術者と工事現場の配置技術者について
①工事現場の配置技術者となりうる要件
建設業の許可を受けた建設業者は、元請、下請を問わず請負った建設工事を施工するとき、
「主任技術者」や「監理技術者」を建設工事現場に配置しなければならないとされています。
(1)「主任技術者」とは、
建設業の許可を受けている建設業者が元請、下請を問わず請負った建設工事を施工するとき、
その建設工事現場における技術上の管理をつかさどる者として配置される技術者をいいます。
「主任技術者」は、建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある者で、
一般建設業の営業所ごとにおく専任技術者に成り得る
資格 又は 実務経験を有する者でなければならないとされています。
(2)「監理技術者」とは、
発注者から直接工事を請負った特定建設業者が、
その建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の総額が、
建築一式工事の場合7,000万円、それ以外の工事の場合4,500万円以上になる場合に、
その建設工事現場における技術上の管理をつかさどる者として配置される技術者をいいます。
「監理技術者」は、建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある者で、
特定建設業の営業所ごとにおく専任技術者に成り得る
資格 又は 指導監督的実務経験を有する者でなければならないとされています。
更に、指定建設業(土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園工事業)における
「監理技術者」は1級の国家資格者 又は 国土交通大臣認定者に限定されています。
②技術者の工事現場への専任配置について
「主任技術者」 又は 「監理技術者」は、
工事一件の請負代金の額が 建築一式工事の場合8,000万円、それ以外の工事の場合4,000万円以上の
「公共性のある施 又は 多数の者が利用する施設もしくは工作物に関する重要な建設工事」については、
工事現場ごとに専任でなければならないとされています。
なお、個人住宅に関する工事を除く ほとんどの工事が、
「公共性のある施設又は多数の者が利用する施設 もしくは 工作物に関する重要な建設工事」に該当し、
この場合の専任とは、
他の工事現場の主任技術者又は監理技術者との兼任を認めないことを意味します。
③下請負人の主任技術者の配置が免除される 特定専門工事について
専門工事のうち、下請代金の合計額が 4,000 万円未満の「鉄筋工事」及び「型枠工事」については、
施工技術が画一的である等として政令で定める工事(特定専門工事)とされており、
元請の「主任技術者」が、下請の「主任技術者」の行うべき施工管理を併せて行うことができるため、
下請負人は「主任技術者」の要件を備える技術者を配置しなくても良いこととされています。
④配置技術者の複数現場への兼任の特例
(1)監理技術者の職務を補佐する者を置く場合
監理技術者の職務を補佐する者 として監理技術者補佐を、
当該 建設工事現場に専任で置く場合には、監理技術者の兼任が認められます。
この様に兼任が認められた監理技術者を、「特例監理技術者」といいます。
但し、この「特例監理技術者」であっても兼任できる建設工事現場は2現場までとされています。
「監理技術者補佐」として、建設工事現場に専任配置できるのは、
主任技術者の資格を有する者のうち、次のいずれかに該当する者です。
・令和3 年4 月1 日以降に、1級の技術検定の第1次検定に合格した者 (1級施工管理技士補)
・監理技術者の資格を有する者
「監理技術者補佐」として専任配置が認められる建設工事の業種は、
その補佐として配置される者が主任技術者の資格を有する業種に限られます。
(2)2現場以上の工事を同一の主任技術者が兼任できる場合
技術者の専任配置を要する請負代金の額が 建築一式工事の場合8,000万円、
それ以外の工事の場合4,000万円以上の公共性のある工作物等に関する重要な工事であっても
密接な関連のある2現場以上の建設工事を、
同一の建設業者が同一の場所 又は 近接した場所において施工する場合は、
同一の専任の主任技術者が これらの工事を管理することができます。
但し、この扱いは主任技術者のみに適用され監理技術者には適用されません。
(3)2現場以上の工事を同一の主任技術者、監理技術者が兼任できる場合
技術者の専任配置を要する請負代金の額が 建築一式工事の場合8,000万円、
それ以外の工事の場合4,000万円以上の公共性のある工作物等に関する重要な工事であっても
次の要件aと要件bをともに満たす場合、これら複数の工事を同一の工事とみなして、
同一の主任技術者 又は 監理技術者が当該複数工事の全体を管理することができます。
(各工事の発注者は、同一 又は 別々のいずれでもあっても配置技術者の兼任は可能です。)
・要件a
契約工期の重複する複数の請負契約に係る工事であること
但し、当初の請負契約以外の請負契約が随意契約により締結される場合に限ります。
・要件b
それぞれの工事の対象となる工作物等に一体性が認められるもの
但し、それぞれの工事について、
下請代金の総額が4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以下であっても、
これら複数工事に係る下請代金の総額が
4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円) 以上となる場合は、
特定建設業の許可が必要となり、
建設工事現場には監理技術者を設置しなければなりません。
⑤専門技術者の配置
専門技術者とは、
「(土木・建築)一式工事の現場」 又は 「(付帯工事でない)主たる専門工事の現場」に
主任技術者や監理技術者として配置される技術者とは別に、
専門工事について配置される主任技術者や監理技術者としての資格・経験を有する技術者のことです。
この専門技術者は、次の(1)や(2)の場合に配置しなければなりません。
(1)一式工事の請負と併せて、請負代金の額が、(税込みで)500万円以上の専門工事を施工する場合
(2)請負代金の額が、(税込みで)500万円以上の(主の専門工事に附帯する)附帯工事を施工する場合
※建設工事現場に配置されている主任技術者や監理技術者が、
専門技術者を兼ねることも可能とされています。
⑥出向者である専任技術者に関する取扱いについて
・転籍出向者とは、
出向元の会社と雇用契約を終了し、出向先の会社と新たに雇用契約を締結し、
出向先の指揮監督の下、業務遂行にあたる者のことをいいます。
この、転籍出向者については、実質として転職と同じ状態であり、
出向先において、直接的な雇用関係にある者であるため、
出向先が請負った建設工事現場の、
監理技術者、主任技術者などの「配置技術者」となることが出来ます。
・在籍出向者とは、
出向元に社員の地位を残したまま出向し、
出向先の指揮監督の下、業務遂行にあたる者のことをいいます。
この、在籍出向者については、直接的な雇用関係であるとはいえないため、
出向先が請負った建設工事現場の、監理技術者、主任技術者などの「配置技術者」として
配置することは原則※として出来ません。
但し、出向者を出向先の 営業所の「専任技術者」とすることについては、
出向協定書、出向辞令、給与等の負担に係る覚書、その他勤務状況や
給与の支払状況の分かるもの等により出向先の営業所への常勤性を裏付けることにより
出向者を出向先の 営業所の「専任技術者」とすることが出来るとされています。
※在籍出向者を、監理技術者、主任技術者などの「配置技術者」として配置することについては、
例外として、一定の「企業集団」として国土交通省より認定を受けた場合は、
親会社からの出向社員を、子会社の建設工事現場へ監理技術者、主任技術者などの
「配置技術者」として配置することが「企業集団」としての認定確認がなされた日より
1年間に限り、可能となる場合があります。
〇在籍出向社員の健康保険、厚生年金保険、雇用保険について
出向した従業員の給与は、どちらの会社が負担し 支払うべきかについては、
明確な決まりはありません。
転籍出向の場合は、
実質的には転職と同じ扱いとなり一般的な従業員と同じ扱いとなるため
出向先が 出向者の給与を 負担したうえで、出向先が 出向者に 直接給与を支払うこととなりますが、
在籍出向の場合は、
出向元に在籍しつつ、出向先に勤務することとなるため、
出向社員に対しての「給与の負担割合」や「給与の支払窓口」は、次の4パターンに分かれます。
(1)出向元が 出向者の給与を 主に(又は全部)負担したうえで、出向元が 出向者に 直接給与を支払う
(2)出向先が 出向者の給与を 主に(又は全部)負担したうえで、出向先が 出向者に 直接給与を支払う
(3)出向元が 出向者の給与を 主に(又は全部)負担したうえで、出向先が 出向者に 直接給与を支払う
(4)出向先が 出向者の給与を 主に(又は全部)負担したうえで、出向元が 出向者に 直接給与を支払う
在籍出向の社員の、
雇用保険については「主に 給与を負担している事業所」での適用になります。
給与を一部負担し合っていれば、
より多くを負担している側が雇用保険料の事業主負担分を負担します。
そのため、
給与の負担割合が出向先の方が多い場合は、出向元における雇用保険の資格を喪失し、
新たに出向先で資格を取得することとなります。
在籍出向の社員の、
健康保険や厚生年金保険については、「直接給与を支払う事業所」での適用となります。
そのため、
出向先から直接給与が支払われていれば、健康保険や厚生年金保険は出向先での適用となり、
出向元から直接給与が支払われているのであれば、出向元での適用となります。