労災保険

労働条件の最低基準を定めることにより、労働者を保護することを目的としている労働基準法では、
労働者の業務上の災害について、労働者を使用する使用者は、使用者自身の過失の有無にかかわらず、
労働者に対し、次の(1)~(5)の補償を行わなければならないと規定しています。

(1)療養補償(75条)
… 労災による怪我や病気(傷病)の治療費に対する補償

(2)休業補償(76条)
労災で働けず、賃金を受け取れないときに支払われる(賃金)補償

(3)障害補償(77条)
… 労災による傷病治癒後、障害(第1級~第14級)が残った時の障害程度に応じた補償 

(4)遺族補償(79条)
… 労災により死亡した者の遺族に対して支払われる補償

(5)葬祭料(80条)
… 労災により死亡した者の葬祭を行う者に対して支払われるもの 

これら(1)~(5)の、労働基準法の「使用者の災害補償責任」については
災害補償責任を負っている使用者に(資力などの)賠償能力がなければ、
業務上、被災した労働者や、その遺族に対して実際に補償を行うことはできません。

そこで、
国によって労働者災害補償保険制度(労災保険)を運営し、
労働者を使用する使用者は義務としてこれに加入し、
労働者は、この労災保険によって、補償を受けることが出来ます。

〇労働者災害補償保険の適用事業所 

原則として、
下記の労災保険の暫定任意適用事業とされる労働者数5人未満の個人経営の農林水産畜産の事業を除き、労働者を1人でも使用する事業が適用事業となり労働者災害補償保険に加入しなければなりません。

〇労働者災害補償保険の暫定任意適用事業

①労働者数5人未満の個人経営の農業であって、
 特定の危険又は有害な作業を主として行う事業以外のもの

②労働者を常時は使用することなく、
 かつ、年間使用延労働者数が300人未満の個人経営の林業

③労働者数5人未満の個人経営の
 畜産養蚕又は水産(総トン数5トン未満の漁船による事業等)の事業
 ※個人経営の農林水産業であっても常時5人以上の労働者を使用している場合は、
  強制適用事業となります。

〇労働者災害補償保険の適用労働者(補償を受ける者)について

・原則として、
 日本国内にある事業場に使用される、すべての労働者が
 常用、日雇、アルバイト、パートタイマーなどの雇用形態、労働時間や労働日数の長短を問わず、
 適用労働者となり労働者災害補償保険の補償を受けることとができます。

・例外として、
 次の①②該当する者は、労働者災害補償保険の適用労働者とはなりません。

①暫定任意適用事業とされる、
 常時5人未満の労働者を使用する個人経営の農林水産業を営む事業所にて、
 労災発生の恐れが少ないとされる業務に従事する者

②国家公務員災害補償法や 地方公務員災害補償法が適用される、
 一般職の国家公務員や地方公務員

※公務員の場合、公営バスやごみ収集作業員などの技能労務職(現業)に従事する
 非常勤の地方公務員などについては、労働者災害補償保険が適用されます。

〇建設工事における、労働者災害補償保険の請負事業の一括について

建設工事では、元請負人が、工事の発注者から請負った、工事の一部を、下請負人に請負わせ、
その下請負人が、 更に、その請負った工事の一部を(孫請けの)下請負人に請負わせるという、
数次の請負が一般的に行われています。

このような、建設工事現場では、労働災害が発生した際に、使用者としての責任の所在が
元請にあるのか下請にあるのか、それとも孫請にあるのか曖昧となってしまいます。

そのため、数次の請負によって行われる建設の事業については、法律上当然に、
工事の注文者から直接工事を請負った元請負人を(労働保険料徴収法上の)事業主とみなし、
元請負人の従業員だけでなく、下請の事業の従業員の分も含めて、

労災保険に係る労働保険料の申告納付等の義務を負うこととされています。
これを、「労働者災害補償保険の請負事業の一括」といいます。

下記の様な、建設工事現場については、法律上当然に、元請負人のみを労働保険料徴収法上の事業主と見做します。

建設業数次の請負体制 元請・下請・孫請の施工体制イメージ図

〇労災保険の保険給付の対象となる業務災害・通勤災害について

「業務災害」とは、

労働者が「業務上」被った、「負傷、疾病、障害、死亡」をいいます。
業務と「負傷、疾病、障害、死亡」との間に一定の因果関係があることを「業務上」と呼び、

業務災害に対する保険給付は、労働者が労災保険の適用事業所に雇用され
事業主の支配下にて業務を遂行している時に(業務遂行性)
業務に起因して発生した災害(業務起因性)に対して行われます。

「複数業務要因災害」とは、

複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする脳・心臓疾患や精神障害などによる
「負傷、疾病、障害、死亡」のことをいいます。

複数の事業の業務を要因とする「負傷、疾病、障害、死亡」については、
複数の事業場の労働時間やストレスなど、業務上の負荷を総合的に評価して、
労災と認定できるかが判断されます。

なお、複数事業労働者であっても、1つの事業場のみの業務上の負荷を評価し、
「業務上」と認められる場合は、通常の「業務災害」として労災認定されます。

「通勤災害」とは

通勤によって労働者が被った「負傷、疾病、障害、死亡」をいいます。
この場合の「通勤」とは、就業に関し次の①~③の移動を、
一般的に労働者が用いると認められる、合理的な経路及び方法で行うことをいいます。

①住居と就業の場所との間の往復
②就業の場所から他の就業の場所への移動
③単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動

なお、これらの、移動の経路を逸脱し、または中断した場合は、
逸脱または中断の間およびその後の移動は、
次の(1)~(7)などの例外を除き、原則として「通勤」とはなりません。

(1)日用品の購入、

(2)公共職業能力開発施設において行われる職業訓練、

(3)学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育

(4)その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為

(5)選挙権の行使その他これに準ずる行為

(6)病院または診療所において診察または治療を受けることその他これに準ずる行為

(7)継続反復して行われる、要介護状態にある
 配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、配偶者の父母の介護

ちなみに、
送迎バスなど、事業主の提供する専用交通機関を利用して出退勤する場合や
休日に、緊急用務のために、呼び出しを受けて出勤する場合などの移動による災害は、
「通勤災害」ではなく「業務災害」として扱われます。

〇第三者行為災害について

「第三者行為災害」とは、労災保険給付の原因である災害が、
その災害に関する労災保険関係の当事者である、「政府」、「事業主」、
労災保険の受給権者である「被災労働者または遺族」以外の、
「第三者」の行為によって生じたものであって、

「第三者」が、
労災保険の受給権者である「被災労働者または遺族」などの「被災者等」に対して、
損害賠償の義務を有しているものをいい、

たとえば、外回り営業などの業務で道路を通行中に、建設現場から「第三者」が誤って落とした
落下物により負傷した場合や、
鉄道の駅員が、乗客に注意した際に、「第三者」である乗客から暴行を受け負傷した場合、
通勤途中に「第三者」が運転する自動車との交通事故により負傷した場合などが
この、「第三者行為災害」に該当します。

「第三者行為災害」に該当する場合、
「被災労働者または遺族」は災害を発生させた「第三者」に対し、
「損害賠償請求権」を取得すると同時に、
政府に対しても、労災保険の「給付請求権」を取得することとなります。

しかし、このように、同一の事由について両者から重複して損害の填補を受けることは、
不合理であり、かつ、 填補されるべき損失は、災害の原因となった加害行為に基づき
損害賠償責任を負った、「第三者」が負担すべきものであると考えられるため、

政府は、労災保険給付の原因である事故が「第三者」の行為によって生じた場合において、
保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が「第三者」に対して有する
損害賠償の請求権を取得し、その取得した損害賠償請求権を「第三者」に行使し「求償」を行うことが出来ます。
 
また、
保険給付を受けるべき者が当該「第三者」から同一の事由について、先に損害賠償を受けたときは、
政府は、その価額の限度で「被災労働者または遺族」などの「被災者等」に対して保険給付を行わない
「控除」を行うことが出来ます。

このような理由により、「第三者行為災害」については、
建設事業者が加入している請負業者賠償責任保険や、自動車運転者が加入している自賠責保険等の
他の制度の、労災保険の保険給付と同一の支給事由の支払いについて、
労災保険給付との支給調整が行われることがあるため、

「第三者行為災害」に関する労災保険の給付に係る請求に当たっては、
「労災保険給付の請求書」に加えて、
相手方と示談や和解を行おうとする場合、労働基準監督署へ報告する必要があることや
労災保険給付の支給調整が行われたり、
第三者に対して「政府」が求償することがあることなどにつき理解し同意したことを示す
「念書(兼同意書)」を添付し、「第三者行為災害届」を提出することが求められています。

※なお、加害者である「第三者」については、
 災害の発生状況及び損害賠償金の支払い状況などを報告するための 「第三者行為災害報告書」を
 所轄の労働基準監督署へ提出することが求められます。

〇労災保険の保険給付額の算出の基礎となる 「給付基礎日額」と「算定基礎日額」について、

労災保険の保険給付は、労働災害によって失われた稼得能力の填補を目的とするため、
療養(補償) 給付、介護(補償) 給付、二次健康診断等給付以外の保険給付は、
原則として被災労働者の、被災前の稼得能力によって給付額が異なります。
具体的な労災保険の保険給付額は 「給付基礎日額」や「算定基礎日額」によって算出します。

「給付基礎日額」は、
原則として労働基準法の「平均賃金」に相当する額となり 以下の様に求めます。

業務上または通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日
または、医師の診断によって疾病の発生が確定した日
(賃金締切日が定められているときは、その日の直前の賃金締切日) の
以前3ケ月間にその労働者に対して支払われた(賞与や臨時に支払われる賃金を除く)賃金の総額を、
その期間の暦日数で割った、1日当たりの賃金額

平均賃金の計算方法

休業(補償) 給付の額の算定の基礎となる「給付基礎日額」は、
厚生労働省が作成している「毎月勤労統計」における労働者1 人あたり1ヶ月の平均給与額の
賃金水準の変動に応じて増額または減額(スライド) されます。

更に、療養開始後1年6ヶ月を経過した場合は、年齢階層別の最低・最高限度額が適用され、
給付基礎日額が最低限度額以下の場合、給付基礎日額は最低限度額となり
給付基礎日額が最高限度額以上の場合、給付基礎日額は最高限度額となります。(休業給付基礎日額)。

年金としての保険給付(傷病(補償) 年金、 障害(補償) 年金、 遺族(補償) 年金)の額の
算定の基礎となる給付基礎日額についても、賃金水準に応じて増額または減額(スライド) され、
年齢階層別の最低・最高限度額の適用があります(年金給付基礎日額)。
年齢階層別の最低・最高限度額は、 年金が支給される最初の月から適用されます。

複数事業労働者の給付基礎日額は、
複数就業先に係る給付基礎日額に相当する額を合算した額となります。

算定基礎日額」は、
原則として、業務上または通勤による負傷や死亡の原因である事故が発生した日
または、診断によって病気にかかったことが確定した日の前
1年間にその労働者が事業主から受けた特別給与の総額 (算定基礎年額) を365で割った額です。

算定基礎日額の計算方法

ここでいう、特別給与とは、給付基礎日額の算定の基礎から除外されている賞与など
3ケ月を超える期間ごとに支払われる賃金をいい、 臨時に支払われた賃金は含まれません。
特別給与の総額が給付基礎年額(給付基礎日額の365 倍に相当する額) の20% に相当する額を
上回る場合には、給付基礎年額の20%に相当する額が、算定基礎年額となり
更に、その額が150万円を超える場合は、150万円が算定基礎年額となります。

複数事業労働者の算定基礎日額は、
複数就業先に係る算定基礎年額に相当する額を合算した額となります。

〇労災保険給付の一覧

①療養補償給付(業務災害)・療養給付(通勤災害)

業務災害又は通勤災害による傷病により療養するときに
・労災病院や 労災指定医療機関等で 療養を受けたとき⇒必要な療養の(現物)給付が行われます。
・労災病院や 労災指定医療機関等以外で 療養を受けたとき⇒必要な療養費の全額が支給されます。

②休業補償給付(業務災害)・休業給付(通勤災害)

業務災害又は通勤災害による傷病の療養のため労働することができず、賃金を受けられないとき
休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額が支給されます。 
加えて
特別支給金として、休業4日目から、休業1日につき算定基礎日額の20%相当額が支給されます。

③障害補償給付(業務災害)・障害給付(通勤災害)

イ.障害補償年金・障害年金

業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に障害等級第1級~第7級までに該当する障害が残ったとき
障害の程度に応じ給付基礎日額の313日分~131日分の年金が支給されます。
加えて、
障害特別支給金として、342万円~159万円までの一時金が支給され、
障害特別年金として、障害の程度に応じ、算定基礎日額の313日分~131日分の年金が支給されます。

なお、
障害補償年金や障害年金の受給権者は、
1回に限り、年金の前払(前払一時金)を請求することもできます。

障害補償年金や障害年金の受給権者が死亡したとき、年金や前払(前払一時金)の合計額が、
障害等級に応じ定める一定額に満たない場合は、遺族(生計を同じくしていた、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、同じくしていなかった配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹)に対して
差額一時金が支給されます。

ロ.障害補償一時金・障害一時金

業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に
障害等級第8級~第14級までに該当する障害が残ったとき
障害の程度に応じ、給付基礎日額の503日分から56日分の一時金が支給されます。

加えて、
障害特別支給金として、障害の程度に応じ、65万円~8万円までの一時金が支給され、
障害特別一時金として、障害の程度に応じ、算定基礎日額の503日分~56日分の一時金が支給されます。

④傷病補償年金(業務災害)・傷病年金(通勤災害)

業務災害又は通勤災害による傷病が療養開始後1年6ヶ月を経過した日 又は、同日後において
要件(1) 傷病が治っていないこと 
要件(2) 傷病による障害の程度が傷病等級(1~3級)に該当すること の

(1)(2)いずれにも該当することとなったとき、
障害の程度に応じ、給付基礎日額の313日分~245日分の年金が支給されます。
加えて
傷病特別支給金として、障害の程度に応じ、114万円~100万円までの一時金が支給され、
傷病特別年金として、障害の程度に応じ、算定基礎日額の313日分~245日分の年金が支給されます。

⑤介護補償給付(業務災害)・介護給付(通勤災害)

障害(補償)年金又は傷病(補償)年金の受給者のうち、「障害等級又は傷病等級の第1級に該当する者」 又は
「精神神経の障害又は胸腹部臓器に障害を残し第2級に該当する者」が、現に介護を受けているとき

(1)常時介護の場合は、介護の費用として支出した額が(172,550円を支給上限額として)支給されます。
 ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、
 支出した額が77,890円を下回る場合は77,890円が支給されます。

(2)随時介護の場合は、介護の費用として支出した額が(86,280円を支給上限額として)支給されます。
 ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、
 支出した額が38,900円を下回る場合は38,900円が支給されます。

⑥葬祭料(業務災害)・葬祭給付(通勤災害)

業務災害又は通勤災害により死亡した者の葬祭を行うとき
315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額が支給されます。
その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分が支給されます。

⑦遺族補償給付(業務災害)・遺族給付(通勤災害)

イ.遺族補償年金・遺族年金

業務災害又は通勤災害により死亡したとき遺族の数等に応じ、
給付基礎日額の245日分~153日分の年金が支給されます。

加えて、
遺族特別支給金として遺族の数にかかわらず、一律300万円が支給され、
遺族特別年金として、遺族の数等に応じ、算定基礎日額の245日分~153日分の年金が支給されます。

遺族補償年金・遺族年金の受給権者は、労働者の死亡の当時、その収入によって生計を維持していた、
以下の遺族の最先順位者となり、最先順位者が死亡や再婚などで受給権を失うと、その次の順位の者が
受給権者となります(転給)。

なお、受給権者は、1回に限り年金の前払(前払一時金)を請求することもできます。

第①順位 妻    年齢や障害状態を問わない  
     夫    60歳以上 又は 一定の障害状態(障害等級5級以上の身体障害状態)にある夫
第②順位 子    18歳年度末までの間 又は 一定の障害状態にある子
第③順位 父母   60歳以上 又は 一定の障害状態にある父母
第④順位 孫     18歳年度末までの間  又は  一定の障害状態にある孫
第⑤順位 祖父母  60歳以上  又は  一定の障害状態にある祖父母
第⑥順位 兄弟姉妹 18歳年度末までの間若しくは60歳以上  又は  一定の障害状態にある兄弟姉妹
※障害状態にない55歳以上60歳未満の夫、父母、祖父母、兄弟姉妹は受給権者となりますが、
 60歳になるまで年金は支給されません(若年停止)。
第⑦順位 55歳以上60歳未満の夫
第⑧順位 55歳以上60歳未満の父母
第⑨順位 55歳以上60歳未満の祖父母 
第⑩順位 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹

ロ.遺族補償一時金(業務災害)・遺族一時金(通勤災害)

(1)遺族(補償)年金を受け得る遺族がないとき、給付基礎日額の1000日分の一時金が支給されます。
又は
(2)遺族(補償)年金を受けている者が失権し、
 かつ、他に遺族(補償)年金を受け得る者がない場合であって、
 すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないとき、
 すでに失権者に支給した年金の合計額を差し引いた額の一時金が支給されます。

遺族補償一時金・遺族一時金の受給権者は、以下の遺族の最先順位者となります。
第①順位     配偶者  労働者の死亡当時の生計維持関係の有無を問わない
第②~⑤順位  労働者の死亡当時、その収入によって生計を維持していた
        第②順位 子  第③順位 父母  第④順位 孫  第⑤順位 祖父母
第⑥~⑨順位  労働者の死亡当時、その収入によって生計を維持していなかった
        第⑥順位 子  第⑦順位 父母  第⑧順位 孫  第⑨順位 祖父母
第⑩順位    兄弟姉妹 労働者の死亡当時の生計維持関係の有無を問わない

加えて、
遺族特別支給金として、遺族の数にかかわらず、一律300万円が、
遺族特別一時金として、算定基礎日額の1000日分の一時金が支給されます。
(2)の場合は、すでに支給した特別年金の合計額を差し引いた額が支給されます。

⑧二次健康診断等給付

事業主が行った直近の定期健康診断等の結果、脳・心臓疾患に関連する一定の項目について
異常の所見があるとき
二次健康診断として⇒各種検査が行われるとともに
特定保健指導として⇒医師等により行われる栄養指導、運動指導、生活指導の現物給付がなされます。
ただし、この二次健康診断等給付は、船員法の適用を受ける船員については対象外となっています。

〇(参考)労災保険の上乗せとなる任意の補償制度について

経営事項審査の「その他(社会性等)」の審査においては、法定の労災保険の上乗せとして、
任意の補償制度に加入している企業を評価しています。
 
評価対象となる補償制度の提供者は、次の①~③に分かれます。
①平成17年改正保険業法附則第2条第1項に基づき共済事業を営む者
②中小企業等共同組合法の認可を受けて共済事業を営む者
③保険業法第3条の規定に基づく内閣総理大臣の免許を受けて保険業を営む者

①「平成17年改正保険業法附則第2条第1項に基づき共済事業を営む者」が行う
  経営事項審査において評価対象となる制度の具体例としては、次の制度があります。

・公益財団法人 建設業福祉共済団の「建設共済保険」
 (HP  https://www.kyousaidan.or.jp/guide/index.html)

・一般社団法人 全国建設業労災互助会の「新労災(傷害プラン)保証制度」「労災上積補償制度」
 (HP  https://rousaigojyokai.or.jp/?page_id=292)

・一般社団法人 全国労働保険事務組合連合会の「労保連労働災害保険」
 (HP  https://www.rouhoren.or.jp/ins/)

②中小企業等共同組合法の認可を受けて共済事業を営む者が行う
 経営事項審査において評価対象となる制度の具体例としては、次の制度があります。

・全日本火災共済共同組合連合会の「労働災害補償共済」
 (HP  https://www.nikkaren.or.jp/coop/labor/index.html)
  
 
③保険業法第3条の規定に基づく内閣総理大臣の免許を受けて保険業を営む者が行う
  経営事項審査において評価対象となる制度は、
 〇〇生命や損保○○などの、いわゆる民間の保険会社が提供する、
 次の要件(1)~(4)を満たす「労働災害総合保険」「傷害保険」などの保険商品となります。
  
(1) 業務災害と通勤災害(出勤中及び退勤中の災害)のいずれも対象とすること。

(2) 当該給付が、死亡及び労働者災害補償保険の障害等級第1級から第7級までに係る障害補償給付
 及び障害給付、並びに遺族補償給付及び遺族給付の基因となった災害のすべてを対象とすること。

(3) 当該給付が、申請者の直接の使用関係にある職員だけでなく、申請者が請け負った建設工事を
 施工する下請負人(数次の請負による場合にあっては下請負人のすべて)の直接の使用関係にある
 職員のすべてを対象とすること(契約時に一人一人補償対象者を記名し、補償対象者が記名者に
 限定される記名式は不可)。

(4) JV工事や、海外工事除く、申請者の行なう工事すべてを対象とし
 工事現場単位の契約でないこと。

〇(参考)労働災害総合保険と傷害保険の違いについて、

労働災害総合保険とは

労災保険の被保険者である従業員等が、
政府の労働者災害補償保険で給付対象となる労働災害を被った場合に
事業主が災害補償金や損害賠償金などを負担することによる損害を補償する保険です。

対象となる被用者の範囲は
政府の労働者災害補償保険で給付の対象となる全ての被用者が補償対象となります。
(アルバイト、パートタイマー、臨時雇い等を含みます。)。

※政府の労働者災害補償保険に特別加入している事業主や役員等についても、
「特約」により、民間の労働災害総合保険の補償対象者とすることが出来ることが有ります。

※被保険者の下請負人またはその被用者を、民間の労働災害総合保険の補償対象とするためには
「特約」によることが必要なことも有ります。

傷害保険とは

加入時に健康状態についての告知義務のない、「怪我」に対する保険です。
加入時に健康状態についての告示義務のある、「医療保険」と異なり
傷害保険では「病気」の補償はされません。

一般的に、「傷害保険」の保険料は、
医療保険に比べ、補償範囲が狭いこともあり安価となる傾向にあります。

なお、「傷害保険」により補償される「怪我」に該当するには、
① 突発的な要因によって、急激に発生した怪我であること⇒「急激性」
② 自分の意思とは関係なく偶然に発生した怪我であること⇒「偶然性」
③ 身体の外部からの要因によって発生した怪我であること⇒「外来性」という
①~③の要件を満たす必要がありますが

「労働災害総合保険」と異なり、補償を受けるにあたって
政府の労働者災害補償保険の「労災認定がなされる」必要は(必ずしも)ないため、

労災により怪我をした際に、(契約内容によっては)政府労災の「労災認定」に関係なく
補償を受けることができます。

傷害保険における契約方式(記名式、無記名式、準記名式)について

記名式は、

補償対象者を1人1人特定して、名簿に登録する契約方式です。
一般的に、保険料は安くなりますが、経営事項審査においては評価対象となりません。

無記名式は、

補償対象者を特定せず、その契約者が雇っている従業員全員を補償する契約方式です。
保険料は直近の売上高によって算出され、記名式に比べ割高となります。

準記名式は、

最高稼働人数を設定し、その人数分の保険料を支払う契約を締結することで、
その人数内であれば、補償対象者の入替は自由とされる契約方式です。
準記名式の場合は、被保険者数が、雇用している労働者数を充足しているのであれば
経営事項審査においては評価対象となります。

なお、
「労働災害総合保険」又は「傷害保険」に加入している場合は、
政府の労働者災害補償保険に加入していること。

事業主や、役員のみの事業所の場合、
一人親方や中小事業主の特別加入をしていることについても
経営事項審査において評価対象とされるための要件となっています。

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