キャッシュに余裕がある事業年度の、経営事項審査対策

キャッシュに余裕がある事業年度の、経営事項審査対策については、以下の4点がポイントといえます。

  • 入札参加資格申請の評価対象となる(表年の)決算期には、利益により生じたキャッシュで借入金を返済する
  • 借入は入札参加資格申請の対象となる(表年の)決算が終了した後、裏年の決算期になってから行う。
  • ①を行ったのち、まだキャッシュに余裕があれば重機の購入(又は長期リースを検討する)。
  • 節税のための保険加入は、経審のY点にはマイナスに作用するため、節税目的の保険加入は慎重に検討する。

〇経営状況分析の8指標について

経営状況分析は以下の8つの指標によりY点を算出しますが、
これら、8つの指標の寄与度は、均一ではなく、寄与度の大きい指標と小さな指標があります。

 指標寄与度
負債
抵抗力
①純支払利息比率29.9(支払利息-受取利息配当金)÷売上高×100
借入金の状況を支払利息の視点から図る指標で、
小さいほど良い。
②負債回転期間11.4(流動負債+固定負債)÷(売上高÷12ヶ月)
期末時点の負債額が月商の何ヶ月分にあたるかを図る指標で、
小さいほど良い。
収益性
効率性
③純資本売上総利益率21.4売上総利益÷2期平均の総資本×100
総資本に対する売上総利益の状況を図る指標で、
大きいほど良い。
④売上高経常利益率5.7経常利益÷売上高×100
売上高に対する経常利益の割合、
兼業を含めた総合的な収益力を図る指標で、
大きいほど良い。

健全性
⑤自己資本対
 固定資産比率
6.8自己資本÷固定資産×100
固定資産を、どの程度自己資本(純資産)で調達しているかを
図る指標で、大きいほど良い。
⑥自己資本比率14.6自己資本÷総資本
総資本中の自己資本(純資産)の占める割合を図る指標で、
大きいほど良い。
絶対的
力量
⑦営業キャッシュフロー5.7(経常利益+価償却実施額±引当金増減額-法人税住民税及び事業税
±売掛債権増減額±仕入債務増減額±棚卸資産増減額±受入金増減額)
÷1億円
営業活動により生じたキャッシュの増減を見る指標で、
大きいほど良い。
⑧利益剰余金4.4利益剰余金÷1億円
これまでに蓄積された利益のストックを見る指標で、
大きいほど良い。

Y点算出について
1番目に寄与度が大きい(寄与度29.9%)「①純支払利息比率 = (支払利息-受取利息配当金)÷売上高×100」は、
小さいほど良い指標であるため

借入金を減少させ支払利息を減少させ、分子を小さくすることにより評点の改善を図ることができます。

2番目に寄与度の大きい(寄与度21.4%)「③総資本売上総資本利益率 = 売上総利益÷2期平均の総資本×100
3番目に寄与度の大きい(寄与度14.6%)「⑥自己資本比率 = 自己資本÷総資本」については、
大きいほど良い指標であるため

現預金残高に余力がある時に、借入金を返済し、資産である現預金を減らして分母の総資本を減少させることで、
評点の改善を図ることができます。

また、
不要な資産・稼働の少ない資産の売却・除却、不要な保険を見直し、「保険積立金」を圧縮することなども
総資本を減らすことができるので「③総資本売上総資本利益率」の評点の向上には有効です。

4番目に寄与度の大きい(寄与度11.4%)「②負債回転期間 = (流動負債+固定負債)÷(売上高÷12ヶ月)」は、
小さいほど良い指標であるため、
借入金を減らすことで、分子の負債合計(流動負債+固定負債)を少なくすることができるので評点が改善します。

④の売上高経常利益率については、寄与度が小さいため(寄与度5.7%)
改善を図っても、評点への影響は限定的となります。そのため、他項目の改善に重点を置く方が効率的と言えます。

⑦営業キャッシュフローや⑧利益剰余金については、分母が1億円となっており、
大規模な事業所でないと点数が付かない算式となっています。そのため、中小規模の事業所では、
これらの項目の改善を図ることが困難です。

上記の理由から、建設業の経営状況分析の評点対策としては、金融機関との関係性や資金繰りなどとの
バランスをとりつつ、借入金返済に重点を置いた対策を行うことが有効といえます。

〇重機等の購入について

経営状況分析の評点(Y点)の8指標の1つである
「⑤自己資本対固定資産比率 = 自己資本÷固定資産×100」については、
固定資産が少ないほど、高い評点が得られるため重機などの購入はマイナスに作用します、

しかし、重機等の購入は、W点において建設機械の保有状況が(15台までは)加点対象となっていることや
土木工事業や建築工事業においては、入札参加資格申請において静岡県や静岡市の独自加点(主観点)も
得られるという理由により

土木工事業や建築工事業の、経審の点数や入札格付に総合的に考えるとマイナスとはならず、
また、利益が出た事業年度の節税、自社の施工能力の向上という観点からも良い選択枝といえます。
経審の加点対象となる重機は下表の重機です。(赤字は令和6年1月より追加された機械)

名称  範囲  
ショベル系掘削機  ショベル、バックホウ、ドラグライン、クラムシェル、クレーン
又はパイルドライバーのアタッチメントを有するもの  
ブルドーザー  自重が3トン以上のもの  
トラクターショベル  バケット容量が0.4立方メートル以上のもの  
モーターグレーダー  自重が5トン以上のもの  
高所作業車※作業床の高さが2m以上のもの  
締固め用機械ロードローラ、タイヤローラー、振動ローラー  
解体用機械  ブレーカー、鉄骨切断機、コンクリート圧砕機、解体用つかみ機  
土砂を運搬する
貨物自動車(ダンプ車)  
自動車検査証の車体の形状欄に、ダンプ、ダンプセミトレーラ、
ダンプフルトレーラと記載があるもの
(備考欄に土砂の運搬に制限がある場合は対象外)
 
移動式クレーン  つり上げ荷重3トン以上のもの  
タイトルとURLをコピーしました